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2015/04/30

( 評論 ) 年金資金の市場からの「出口戦略」は?

Tweet ThisSend to Facebook | by:olc_admin
  ( 評論 ) 年金資金は市場からの「出口戦略」をどう描いているのだろうか..?
 
  A. 先ず、年金資金等が投資している東証株価の実数は..。
         東証株価/日経225銘柄平均が、4月22日20,133円と2万円(場中の高値は20,145円)を超えた。TOPIX(1部上場
    1,881銘柄の株価合計を基に算出される指数-1968年4月1日を100とした指数-)は1,621.79となり、同 1部出来高
    27億95百万株・売買代金2兆89百万円となった。2000年4月14日以来15年振りの2万円台である。
         
      株価をここまで押し上げた要因は何だったのだろうか..。
     2015年3月期の企業業績発表は4月下旬-5月中旬にかけ集中しているが、円安・原油安を受けて多くの銘柄が
    増益を確保する見通しと伝えられている。- (上述22日の9時前に3月の貿易統計が発表され、輸出入額はは2,292
    億円の黒字で2年9ヶ月振りの黒字計上が速報された。2012年頃の1ドル70円台半ばと言う超円高を脱し、輸出企
    業を中心に経営環境は劇的に改善した。) -  円安・原油安が継続すると「時価会計」で殆んどがプラス作用すると
    言われ利益と自己資本は想定よりも増殖するも、真の利益実態を示すものではないとの指摘もあるが、3月期の利
    益合計はリーマンショック前の水準を超え7年振りに過去最高を更新する見込み、と報道されている。

     そして、実際に株を買うサイドの資金が、3月の〈年金資金等の総動員による「官製相場」の様相となる〉で触れた
    「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」を主とする年金資金、日銀・郵政関連資金等の総動員による巨額資
    金の市場投入である。
     従前からのヘッジファンドに代表される外資、生損保会社に代表される国内主要投資機関(信託銀行・投資顧問
    会社等)約150社は投資額を増額、証券会社は私募の投資信託に新商品を続々投入、政策商品「NISA」もありで窓
    口・ネットでの個人資金の市場投入にやっきとなっており、日銀の国債買入れから始まった株価の高騰は、全員参
    加型の上げ相場となっている。

   B. この株価は政権の介入の結果でもあり、リスクをどう捉えているのか..?
       さて問題のGPIFであるが、官僚主導と言うよりも明らかに官邸主導での相場形成と言わざるを得ない現今の
    「官製相場」は、何故今なのか..?   
     昨年末に米国格付け会社ムーディ-ズが、 日本国債の格付けを中国や韓国より低く格付けしたが、 2月の「経済
    財政諮問会議」で、日銀総裁はそれが銀行の体質強化を狙う米欧の動きと相俟って邦銀の国債売りを誘う恐れを
    指摘し「財政再建に本腰を」と訴えた。  これに総理大臣は「格付け会社にしっかりと働きかける事が重要」と応じ
    た..。 と報道された。
    
     総理の言は、公的債務残高はネット(政府の資産を差し引いた純債務)で見ると、他国とあまり変わらないと言う
    説明をしなければならない..。と応じたとも伝えられる。 財政の悪化は歴代政権の多くが財政規律を軽視したから
    で、現総理の責任だけではないが、それにしても改革より介入に傾くのは理解し難い。
                     -(別件で、世評されているマスメディアへの介入も然りで、同じ発想か..。)-    

     さて肝心な「官製相場」株価への介入だが、効果もあるが同時にリスクもある介入は日銀の金融緩和で資金
    供給してきた。政府との合意を基に2%のインフレを目標に国債や株式上場投資信託を買い、円安・株高、国債
    金利低下を助け、国債や株式市場では公的年金の株購入と合わせて「官製相場」と言われる所以である。

  C. 年金資金のリスク撤退・出口の戦略は..?
     仮に日銀があと2年も緩和を続ければ金融機関等が国債投資から離れて、結果として日銀が国債購入を減額
    すると金利は急騰すると予測されている。資本逃避も起きて物価高騰を招くとされ、物価は高騰し始めると管理
    しづらい曲者と化す。安定的な官製インフレは至難の業だ。
     株価はどうか..、緩和が続けばマネーが溢れて過度の楽観論が広がり、バブルの発生と崩壊に至る恐れが必
    然的に台頭する可能性は想像に難くない。 現実、財政がないがしろにされていると言う声はエコノミストレベル
    には結構ある。財政再建の見通しがたたないまま日銀緩和による市場介入が長引けば、混乱のリスクが増すの
    は論を待たない。 現時点、この部分のリスク管理が殆んど窺えないのも一つのリスクである。

     更に、株式市場はグローバル市場を標榜しており、資金循環は諸外国の経済は勿論、政治情勢の動向からも
    当然の様に影響を受ける。グローバルな資金を受け入れている以上避けて通れないのは現実問題である。 
     斯様な市場に国民の年金資金を、それも外国株を含めて資金の50%最大67%まで許容可能の枠を設定すると
    は..、JPIS自体が投資機関化する事に懸念を持たないのだろうか..。 設定した枠の説明は勿論、根拠としている
    「国民年金保険法」での管理・運用について国民にあまねく説明されているとは言い難く、政権の政策に言わば
    都合よく利用されている現実となっている。  
     されば、現時点でも利益は相応額確保されている筈なれば、ヘッジファンド等の出口戦略に遅れぬよう投資額
    の縮小や撤退をも視野に入れた方策を現実策としてより早期に持たねばならないと思料される。           
  
                                                           
                                         2015/27.4.24   - 佐倉//塙 -

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